「三つのタイプ

 上からなにかを命令されると、そっくりそのまま下につたえる。催促されれば、またそのまま下に催促する。いわば連絡係りにすぎない存在だから、考えてみると、仕事の邪魔になるだけである。ところが、こういう人物が会社の管理者といわれる人のなかに、意外に多いものである。

 管理者には、およそ三つのタイプがあると思う。ひとつは号令型で、仕事に対して、これといって理解も情熱もなく、批判があるわけでもなく、ただ下に向かって号令をかけている型である。いたずらに、シッタ激励するのだから、迷惑をこうむるのは下の諸君である。

 これにくらべれば、少しはマシなのが無難型。ひととおりの訓練も受けているし、仕事にもまずまずの理解力がある。人を使うことも一応は心得ている。だから型にはまった仕事は無難にさばくが、それ以上のことを望むと、たちまち手をあげてしまう。定石どおりにはやるが改革とか、刷新とかにはまことに不向きな人物である。三番目は指導者型。指導者という名がつけられるのだから、創意、先見、思慮、判断、実行力など、いろいろの条件が求められる。どこの会社にも、社風というものがあるが、これは一朝一夕で、できあがるものではない。たいてい経営者の思想、理念が社風となってあらわれており、質素な社風もあれば、豪放な社風もある。なによりも信用という社風もあろう。このような社風は、指導者と呼ばれる人が長年にわたって、社員の一人一人に徹底させ、築き上げてきたもので、一歩社内に足を入れると、その応待ぶりや茶わんひとつの扱いかたで、その社風が感じられる。こうした印象が会社の実情を知るうえに大いに役だつことは、私の経験でもよくわかる。社風を創造するのは指導者であろう。

 こう考えてくると、数多くの社員を訓練することが管理者にとって、最も重要な任務になるが、同時に経営者たるもの、自分が選んだ管理者が果たしてどのような指導、管理をしているか、ときどきみずからの目でたしかめる必要がある。管理者を訓練することこそ、経営者の見識であり、手腕である。


「ほっちゃれ社長」目次INDEXへ

<ロボット検索で訪問の方 >
東京都中小企業団体中央会 TOPページへ