適材適所こそ、経営のかなめといわれる。私も、むろんこれに意義をさしはさむものではないが、このことを、はっきりと形にあらわしていくのは容易ではない。
中小企業のなかには、社長の縁続きというだけで、重要なポストについている人が多い。これもおかしいが、入社して一年そこそこというのに「仕事が気に食わない」とか「こういう使い方は、自分のためにも、また会社のためにも利益にならない」などといって、職場の変更を申出るのも、おかしなことと思う。たった一年で、その仕事に向いていないという判断ができるだろうか。いやになったとか、おもしろくないとかいうのは、適材適所にそむいているのではなく、いわば身勝手な言い分としか思えないのである。私は、こう考える。経営者と従業員の忍耐強い協力から生まれ出るものが、本当の適材適所であろうと。
精魂をかたむけて仕事に打ち込んだなら、その仕事のどこかに興味や魅力を感じるにちがいないし、そうなれば張り合いが出てきていつの間にか、仕事に引き込まれる。適材適所は、最初からあたえられる筋合いのものではなく、時間をかけて、みずからが手に入れるものだと思う。
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