ハリウッドの女優の浮き沈みが、たいへんに激しいことは、世に知られている。アメリカでは、映画女優の人気の消長ほどきびしいものはなく、きのうのスターが、きょうは古シャツのように捨て去られることも、めずらしくないようである。そこには冷酷なまでの生存競争、非情そのままの淘汰が行われている。この例が示すように、どこの職場でも、そのなかでの能力競争は、まったく火の出るほどの激しさ、きびしさで、アメリカでの人事管理の実情を、はっきりとうかがい知ることができる。
どの産業でも、それぞれの能力、能率は「従業員勤務成績評定制度」によって、明らかに示される。すべてが数字的に計算され、情け容赦なく評価されるのである。もし、能率が低下したとの評価が下されれば、十年勤続の社員も、入社ホヤホヤの若い社員の下で働くようになる。職場を転換しても、評価が低く、いよいよダメと決まれば、すぐに解雇され、しかも、だれもがそれに不思議を感じない。日本で見られるような、年齢、扶養家族、勤続年数、その人の性格といった条件は、いっさい考慮されず、すべて能率本位。とにかく割り切った考え方には、 言葉を差し挟む余地がなかった。
まさに歯切れの良い人事管理の方式であり、そのために各職場、各工場の能率は、いつも高水準を保ち、産業全体の生産性も、日に日に、向上していく。そこで、だれもが考えることは、この方式を、そっくり日本に移し換えたら、一体どうなるだろうかということである。
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