「税金は滞納すること

 税金を滞納して、税務署からのきついお達しがきてから、あわてふためくというのは、どう考えても感心しない。それどころか、まことにおかしいのである。
 もっとも、政府も、ほめられたものではない。二重構造の解消、経済成長と、お題目だけは立派だが、ヤマブキとおなじで、少しも実がない。財政硬直というから、その硬直をどんなふうに直すのかと、じっと見守っていたら、四十三年度もインフレ予算が出現した。税の自然増収が見込まれるとのことであるが、この自然増収が怪物で、私などを身震いしてしまう。つまりは、取りはぐれのないように、びしびし税金の取り立てをやるということであろう。
 自由化への歩幅を速めるというなら、一方で国内企業の国際競争力を高めなくてはならないのは、あたりまえのことであるが、そうなると弱小企業はどうしても片隅に追いやられる。だから、税金も払えぬようなそんな弱小企業に、いつまでもしがみついているにもおよぶまい、というのが私の言い分なのである。いかにも非情な言い方かもしれないが、もって生まれた性分で、口先だけで、なぐさめたり、はげましたりするのは大きらいである。


 お山の大将よりも、心豊かなサラリーマンになりなさい。企業合同が近道ですよと申し述べたが、それは先の見込みがある企業のことである。お先真っ暗の企業に、なにをいっても仕方がなかろう。そこで会社の整理にとりかかると、債権者が押し寄せてくるし、従業員も騒ぎ出す。こういう会社にかぎって、平素がルーズだから、なにがどうなっているのか、したがってどうしたらよいのか、判断がつかず、収拾がつかないものである。では打つ手がないのかというと、そうではない。実に、うまい手がある。
 それは、まず税金を払わぬことである。絶対に滞納して、そして差押さえ処分を受けることである。そうすれば、否応なしに、税務署が整理をしてくれる。自分の手ではどうにもならず、そのうえ、ノイローゼになるよりも、いっさい税務署にお任せするのが上策、得策というものである。
 こうして、弱小企業がだんだん整理されていけば、二重構造もおのずから解消する。しかも、税務署、つまり政府の手で、それをやるということなのだから、まことに首尾一貫していると思う。
 万一、税務署が親心を出して、差押さえをしないような相談を持ちかけてきたら、超長期月賦納税ではいかがでしょうと、伺ってみること、それが合理的である。とにかく、最後は税務署にまかせると、腹をすえること、だから税金は滞納するにかぎる。

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