「銀行から金を借りるな

 銀行が金を貸してくれないからといって、青い顔をするなどは心がけが悪いというものである。そんなことよりも、借りないくふうが第一であろう。
 経済成長、近代化、合理化などという世間のかけ声に、ついその気になって、そうしなければ、いまにも競争から脱落してしまうように考えがちであるが、それこそ考えすぎというものである。ときには、情けなくなることさえある。

 金融引き締めといっても、銀行は、強いつながりのある大企業に貸さないわけにはいかない。日銀から借りたり、高利のコール資金を取ってでも、その方に回すことになる。どう考えても、中小企業に金が流れにくい仕組みになっているのだから、金を借りるのは社長の腕次第だ、信用だなどと、力んでみてもはじまらない。三百万円そこそこの資本金で、やれ土地だ、工場だと二千万円、三千万円を無理して借りて、それを固定させておく。東京都内の製造業者について調べたところでは、従業員一人当たりの金利負担は二千二百万円にもなるというから、まことにおどろきいるほかない。銀行に利息を払うために、毎日汗を流しているようなものである。

 では、どうしたら銀行のお世話にならないで(まったくお世話にならないわけにはいくまいが)やっていけるかというと、そのひとつは企業合同だと思う。
 お山の大将という根性が、すべてを支えてきた柱だったことは、決して否定しないが、ただそれだけにすがる時代は、もう過ぎ去ったように思われてならない。他人資本は入れたくない、自分の子にそっくり譲り渡したい、このことに凝り固まっているから、借金にたよりたくなる。資本構成が弱くなり、いつかは銀行にも背を向けられてしまうのである。わが子が、親の思いどおりに育ってくれればよいが、それがはずれたら、一体どういうことになるのだろう。かりに、親の思惑どおりに育って、仕事を受け継いだところで、親の時代と、子の時代とでは大きく違い、親の経営方式がそのまま通用するかどうか、はなはだ疑問である。中途半端な考えを捨てて、この辺で思い切って出直してほしいものである。社長も、新しい時代の、新しいサラリーマンに生まれ変わることである。

 思い切りよく合併し、余計な土地、建物、設備を処分し、一個所か、二個所に集結する。土地の値上がり時代だけに、処分した金は、運転資金として大いに役立つだろう。だれもかれも、おなじような仕事をして、過当競争を繰り返しているよりも、はるかに合理的と考えるのだが、いかがであろう。
 こうした合併企業がいくつか生まれ、そのうえで協調できたら、大きな力を発揮できるに相違ない。くる日もくる日もあくせくして、心温まるときのない社長よりも、サラリーマンにはなったが、経営も、懐具合も楽になる方が、おおらかな人生ではないだろうか。お山の大将よ、さようなら。いまは、そんな時代だと思うのだが……

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