この請願がみのって、たしか三億円の預託が実現したと記憶している。一人の力ではどうにもならないが、みなが力を合わせれば、よほどの難事でもなしとげられるものだと、よろこび合った当時が、なつかしく思い起こされた。こんな回想を打ち消そうとでもするように、会議への出席を催促する使いがきた。
どういうめぐり合わせか、会議は金融委員会であった。目の前で論議されていることは、古い請願書とほとんど変わるところがない。そうすると、請願書を出したころと、いまとを比べても、少しも環境が変わっていないということであろうか。自己嫌悪感が頭をもたげそうになるのを、押さえ切れなかったのである。しかし私は思い切りよく、回想の糸をたち切り、きょうの議題に新しいファイトを燃やすことにした。
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