「ああ中小企業省

  中小企業省をつくれという声が高まっている。私もその一人である。中小企業という独立した産業があるわけではないのだから、産業政策全体のなかで対処していくのが本筋で、中小企業施策の拡充をはかることは大切であるとしても、独立の機構をつくるのは、むしろ行政効果を少なくする。省の必要がないという反論は、こういっている。まことに、そのとおりである。
 政策さえ充実すれば、省であろうと、庁であろうと、あるいは局、部、課であろうと、一向にかまわないのであるが、それにもかかわらず、省の創設をさけび続けるのは、なぜであろうか。それには、それなりの理由があると思う。

 中小企業基本法を持ち出すまでもなく、企業の自主的努力を基本にすることは当然である。しかし、自主的な努力をみのらせるためには、なによりも政策の先行が必要なことも本当である。ズバリといわせてもらえば、いくつかのザル法よりも、財政支出の裏づけを持った強い施策が必要なのである。毎年の政府予算をみれば一目りょう然であるが、中小企業の予算は、まことにスズメの涙ほどにすぎない。

私たちの失望は、ここに集約されているといってよい。政策の比重が行政機構に左右されるはずはないのであるが、実際には、そういう傾向があることを否定できないと思う。そこで、中小企業省を設け、大臣を持ちたいということになる。そうすれば予算の分どりにも迫力を加えてくるという。分どり競争で戦果をあげる方が賢明だと、私たちの経験が教えてくれるのである。

 中小企業大臣をやっていれば選挙では当選確実。国会に中小企業常任委員会ができ、この委員になれば当選確実。そうするのが中小企業の政治力結集だという高説をきかされたが、これを笑う気にならなかった。
 中小企業の、きわめて現実的な要求が省の創設運動である。こうまでしなければならない中小企業の立場、私には、それが悲しいのである。


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